紙をめぐる話|紙の生まれる風景 No.32

大子那須楮(だいごなすこうぞ)
表皮剥き

濛々と立ち上がる湯気、湯気、湯気。
蒸した楮が冷気で剝きにくくなるのを防ぐ
麻布から幹を取り出し、
慣れた手つきでするするすると皮を剥いでいく。
表皮は茶色だが、皮の内側は微かに
白の気配がする薄緑色。
ここで剥かれた楮の皮が和紙の原料になる。
残った幹は、風呂の薪や、
細かく砕かれて畑の肥料にされる。
表皮剥きの手伝いを
集落の子どもたちがしていた時代には、
チャンバラの刀としてあちこちで
振り回されていたという。
肌を刺すような寒さの中、この作業を一日7回、繰り返す。
みなでおしゃべりをしながら皮を剥いていくので、
大きな笑い声が度々挙がるくらいに
楽しげな現場ではあるが、
作業している方々のほとんどは70歳を越えている。
和紙の価値が世界的に高まっても、
楮が消えれば和紙も消える。
楮農家の未来をどう育てるのか。
いま日本が問われている。

初出:PAPER'S No.67 2024 夏号

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