紙をめぐる話|紙の生まれる風景 No.30
特種東海製紙 岐阜工場 |
紙は、森や川が形を変えてできたものだ。
いわば自然の一部を一時的に借りて
つくっているわけだから、役割を終えたら、
環境に調和する状態で返す必要がある。
岐阜工場では、紙を抄くために使った水は、
凝集沈殿やオゾン脱色などの
強力な浄化処理装置を通してから川に戻す。
その純度は高く、川の水よりも透き通っているほどで、
酸素が豊富に含まれることから
生きものも良く育つという。
浄化処理で取り除かれた繊維等の残滓が、
ペーパースラッジ。これらは資源の山であり、
かつては田畑の肥料に、今ではバイオマス発電の
燃料にと、多様な形で自然に還される。
ものづくりのあり方が
世界的に問い直されているこの時代、紙のつくり手は、
紙のことだけを考えるのでは足りない。
欠かせないのは、生態系全体を見据えた
大きくて長い視点。
紙づくりとエコシステムづくりは、表裏一体でありたい。
初出:PAPER'S No.65 2022 夏号
※内容は初出時のまま掲載しています