紙をめぐる話|紙の生まれる風景 No.24
王子製紙 苫小牧工場 |
目の前の風景が白一色に染まった。
平らに伸ばせば1.3キロメートルにも及ぶロール紙。
身近な紙とは桁違いの大きさが発する威圧感のなかに
どこか柔和で軽やかな印象を抱くのは、
紙の白さとしなやかさによるものかもしれない。
やがて新聞になるこの紙の主原料は回収古紙。
黒々と文字に埋め尽くされていた古新聞や古雑誌が
インキの分離や漂白、洗浄などの工程を経ることで、
初々しささえ感じられるまっさらな姿に蘇る。
苫小牧工場が古紙の活用をはじめておよそ40年。
積年の技術開発と整備された日本の回収制度が相まって
活用量は当初の20倍に達し、品質も進歩を続けている。
生まれては消え、消えては生まれる膨大なニュース。
その運び手として新聞紙もまた、自らを白紙に戻す。
初出:PAPER'S No.59 2019 夏号
※内容は初出時のまま掲載しています