紙をめぐる話|紙の生まれる風景 No.22
王子製紙 苫小牧工場 |
未来に続く古い水路があった。
電力を用いず、自然勾配を活用した水の流れによって
貯木場から工場構内に運ばれていく数々の原木。
鳶と呼ばれる長柄で、重たい丸太を軽々と操る工員たち。
自然と人のみの簡潔な力で営まれてきた送木水路は、
現代においても理に適った運搬方法だという。
流送された木々は巨大な皮むき機で樹皮を剥がされ、
回転する砥石で丸ごと磨り潰される。
創業時から変わらず受け継がれてきた製造工程。
森からもたらされた木を素のまま原料にすることで
素材本来の特性が生かされた苫小牧工場のパルプからは、
近年続々と個性ある新鮮な紙が開発され始めている。
流れを断ち切り、変えることだけが新しさではない。
流れを守り、価値を見いだすことからも
未来は生まれうる。
初出:PAPER'S No.57 2018 夏号
※内容は初出時のまま掲載しています