紙をめぐる話|紙の生まれる風景 No.15
日清紡ペーパー プロダクツ |
細長い紙が突然、ローラーの隙間から
ひょっこりと顔を出した。
横幅はおよそ30cmほど、人の肩幅くらいだろうか。
ぴんと張りのある外観は
すっかり紙の体を成している。
長年使い込まれ経年変化した機械との
コントラストによって
真新しい紙の白さはいっそう白く際立ち、
目にまばゆいほど。
その紙が数m離れた向こう岸にある機械のローラーヘと
つなぎ渡された瞬間のことだった。
細長だった紙はみるみるうちに横へ横へと広がっていき、
視界はあっという間に一面の真っ白な質感に満たされた。
まるで大きな白い絨毯が
一瞬にして目の前に現れたようだった。
幅広になった紙は、対岸へ勢いよく突き進んでいく。
その先で紙は裁断され、後は静かに出番を待つ。
ワイヤー、プレス、ドライヤーパートと
長い工程を経た紙の誕生の旅は、
ここでようやく終わりを迎えるのである。
初出:PAPER'S No.50 2015 秋号