紙をめぐる話|紙の生まれる風景 No.14
日清紡ペーパー プロダクツ |
朦々と蒸気が立ち上がるその様子は、
山あいを白く包みこむ朝霧のように幻想的だった。
漉きあげられたばかりでまだパルプの面影を残す湿紙は、
まずプレスパートと呼ばれる巨大なロールに挟み込まれ、
圧力によってたわわな水分を搾り出される。
そこで搾り切れなかった残留水分を
熱の力で蒸発させるのがドライヤーパートである。
高温度に熱されたシリンダーを通過した紙は、
およそ4〜7%まで水分量を落とされる。
その熱の冷めやらぬまま次の工程に運ばれていく
瞬間を捉えたのがこの写真である。
紙をつくる過程とは、水を抜いていく過程でもあり、
それが紙の背筋は伸ばし、張りを生み出す。
ようやく紙本来の姿が垣間見えてきた。
初出:PAPER'S No.49 2015 春号
※内容は初出時のまま掲載しています