紙をめぐる話|紙の生まれる風景 No.03
三菱製紙 八戸工場 |
水平線の遥か彼方、遠くチリや豪州で育まれる、豊かな森。
パルプの原料となる木材チップは、それらの森でつくられ
大型船で1〜2ヶ月もの時間をかけて
はるばる八戸工場専用の港へと届けられる。
そもそも、 蒸解釜でチップを煮込んでパルプをつくり、
そのパルプから紙を生成してこそ、
紙づくりの一貫生産といえる。
どっさりと木材チップが積まれたこの光景は、
紙づくりの全工程をこなせるだけの設備を持った
大手製紙メーカーの工場でしか
目にすることができないものである。
チップヤードで隆起する山々のうち、最大のものは
高さ14m、重さは水分量をのぞいても約25,000tに及ぶ。
4階建てのビルをもしのぐ大きさだが、それだけのチップも
わずか10日ほどで使い切ってしまうという。
チップの約半分は水分のため、山はふかふかで
人が登れば足を取られそうになるほどやわらかい。
まるで砂漠の丘のように悠々とそびえるチップの山は
海辺で今日も、紙となるその時を待っている。
初出:PAPER'S No.34 2010 冬号
※内容は初出時のまま掲載しています