紙をめぐる話|紙の研究室 No.26

贅の分解
─静かな書籍が
雄弁に語るもの。

いにしえより日本の人々が
心を通わせてきた四季のうつろいを、
日本料理を材として写真と詩歌と散文で綴った書籍
『晴れの日本料理 青草窠のひと刻』。
静かな佇まいでありながら、
千年にわたる日本文化の豊かさを
雄弁に語りかけてくる特装版の装丁に秘められた、
多様な贅の細工をひも解きます。

初出:PAPER'S No.59 2019 夏号
※内容は初出時のまま掲載しています

伝統と現代の重なり
三年余をかけて緻密に形作られたこの書籍には、紙から製本、印刷まで、どこを切り取っても歴史や文化の風格が漂います。それでいて今日の書籍に並べてもすんなりと馴染むのは、伝統と現代の素材やあしらいを随所でコラボレーションさせているから。たとえば表紙には唐紙を、本文にロベールを用いることで古雅な風合いにシャープな質感を調和させるなど、千年の時と現代の途切れのない連なりを感じさせる設えが、様々に織り込まれています。

 
 
  • 国の重要無形文化財保持者である九代目岩野市兵衛氏が漉いた越前生漉奉書に、上田義彦氏の写真を印刷した付属の特別プリント。

  • 唐紙に英文を添えることで、古典の持つ日本の品格ある美しさを現代に通ずるかたちで引き出した。

  • 表紙の唐紙は、京都で約400年続く唐紙屋・唐長の唐紙師トトアキヒコ氏が、越前生漉奉書を雲母染めした上に、江戸時代に京都大宮御所で使われた板木で「梅の丸」の文様を一枚ずつ手摺りしている。

  • 天アンカットにすることで不揃いにし、立体感や手作りの余韻を残した。

  • 四季と料理に寄り添う和歌や随筆を選定。今日まで途切れることのないいにしえびとの想いを知ることができる。

  • 谷崎潤一郎『陰影礼賛』を彷彿とさせる光と陰。料理写真の定型を取り去り上田氏の美意識を通して撮影。

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