はじめての銀ナノインク |
──紙に出力できる電子回路
難解なイメージのあった電子工作が、いま、
画用紙に絵を描くように簡単にできる日常行為に
変わろうとしています。
それを実現するのが銀ナノインク。
その仕組みとは?できることとは?
どんな未来絵図があるのか?
開発会社であるAgICの杉本雅明さんにうかがいました。
初出:PAPER'S No.52 2016 夏号
※内容は初出時のまま掲載しています
そもそも銀ナノインクとは何ですか ?
数万分の1ミリサイズの銀の粒子が含まれたインクです。カートリッジに装填すれば文書と同じ感覚でインクジェット出力ができます。最大の特徴は、銀ナノインクで印刷した紙が電気を通すこと。つまり家庭でも簡単に紙に電子回路を出力することが可能です。また弊社では、紙に描くだけで回路ができるマーカーも開発しました。身近にある道具で、あらゆる人があらゆる場所で手軽に電子回路をつくれるんです。
銀ナノインクで暮らしはどう変わりますか?
銀ナノインクはオンデマンドで出力できるので回路を1枚から試作可能です。薄くて軽い紙の回路なら好きなところに機能を貼ったり挟んだりすることができるため、たとえばフレキシブルな照明や極薄の床暖房など、これまでの概念を覆すプロダクトを生み出すことも可能でしょう。世の中の暮らしをどう変えられるのか、これからクリエイターの皆さんと一緒に新しい活用方法を考えていきたいと思っています。
現在はどのような取組みをされていますか ?
見本帖本店の展示会「折り紙の呼吸」展を皮切りに竹尾さんと博報堂の岡室健さんと開発を重ね、昨年からミラノサローネで作品を発表しています。クリエイターとの連携で期待することは技術者には浮かばない発想。たとえば技術者は回路が光りさえすれば素材にはこだわりませんが、クリエイターは紙の種類まで選びたいと考える。すると冷たい印象だった回路に紙の温かみが加わりますよね。現在もファインペーパーと銀ナノインクの色々な可能性を探っている最中ですが、そんな風に世界中の人たちと協調していくことが無限の進化につながると考えています。