ボルトで綴じる作品集 |
『髙田唯 AXIS』は、
グラフィックデザイナー髙田唯による
日常的なワークや実験的なプロジェクトを
ボルドー色の厚紙GAボード-FSで包んで、
真ん中のひとつのボルトで綴じる、
という意表を突くデザインの作品集。
編集から装幀、発行までを手掛けたのは、
北京を拠点とするグラフィックユニット
ori.studioです。
初出:PAPER'S No.66 2023 秋号
※内容は初出時のまま掲載しています
デザイナーの話
ori.studio(北京)
私たちは、抽象的なアイデアを具体的な形にすることをコンセプトに活動しています。プロジェクトにどの紙を使うかを検討するとき、私たちは自然な共鳴を得られる素材を探します。紙は、身近であると同時に地球との結びつきが強く、地球上の存在としての温もりを感じさせる素材です。竹尾の何千ものサンプルを見ていると、私たちを取り巻く環境の記憶と密接に関係し、形のないものを降ったばかりの雪のような親しみを感じる形に変換することができるのだと感じられます。髙田さんの活動は、まるで紙のように、私たちを包む何気ない光景のユニークな性質を「認識」させ、紛れもない親しみと温もりを与えてくれます。この髙田さんの活動の核となる属性を物理的に目に見える形にしたいと考えました。『AXIS』は、各作品の特徴に関連するさまざまなサイズの60の独立したモジュールで構成されています。1種類の非塗工紙を使用していますが、厚みを変えることで、作品の違いを印象づけることができました。モジュールごとに微妙に変化する紙のリズムは徐々に明らかになる髙田さんの世界と調和し、厚手で手触りの良いボルドー色のGAボード-FSに包まれたポリフォニックな関係性に、髙田さんの活動に対する親しみと温かさを感じていただけると思います。
著者の話
髙田 唯(Allright Graphics)
ori.studioとは、 2019 年に彼らがつくった『c-SITE』という冊子に参加したのがきっかけで出会い、いつか書籍を一緒に作りたいねと話をしていたんです。
ギンザ・グラフィック・ギャラリーの個展「混沌とした秩序」でそれがついに叶いました。 今回の書籍は、 直接会うことなくオンラインを介して対話を丁寧に深めながら進めていきました。 Dropboxに僕がどんどん投げ込んだ素材を、 彼らが上手に料理してくれました。 試作もいろいろ作ってくれて。 表紙は彼らが提案してくれた中から、 最終的に白色にするかボルドー色にするかかなり悩みましたけれど、 結果ボルドーで正解だったと思います。 本文は主にスウェーデンのメーカーMunkenの紙LYNX の100、120、240g/㎡で、 様々な加工を凝らしたページが束になっています。 進めていく中でタイトルにもなったテーマ、 AXIS(軸)を体現するために出た「串刺しにしたい」というアイデアも、柔軟に取り込んでくれて。最後に包み込むという装丁が、全てを受け止めてくれた彼らを表しているようですよね。 図版の特徴をちゃんと汲んで、それをまた製本で加工して面白くしようと考えるあたり、 理解度が高いし、 楽しんでくれているし、 僕を楽しませようともしてくれるし、 本当に幸せな体験でした。