竹尾ポスター |
──デザインのちから・文字のちから
Typographic Posters of the 20th Century
いま、東京都庭園美術館では
「タイポグラフィ」という切り口から
20世紀のポスターの歴史を振り返る
展覧会が開催されています。
実はそれは、竹尾の所蔵するポスターの数々が
ベースになっていることをご存知でしょうか。
展覧会を担当した学芸員の方に、お話を伺いました。
初出:PAPER'S No.37 2011 春号
※内容は初出時のまま掲載しています
※展覧会は終了しました
学芸員の話
浜崎加織さん(東京都庭園美術館 展示係)
ポスターの展覧会は多数行われていますが、タイポグラフィをテーマにしたものは今までにあまりなく、タイポグラフィだけに焦点を絞って20世紀を一望しようとする試みは、おそらく今回が初ではないかと思います。そもそもタイポグラフィの歴史は、19世紀に聖書の複製本の制作がはじまったことに端を発しています。それが20世紀に入ると、印刷技術の発達にあわせて、大量印刷にも耐えうるような文字のデザインの探究へと進んでいきます。さらに1984年にアップル社からマッキントッシュが発売されて、デスクトップ・パブリッシング(DTP)による大革命が起きたことで、デザイン表現はさらなる広がりを見せるんです。タイポグラフィに着目して竹尾のコレクションを俯瞰すると、そうした技術革新や社会の動きに伴う表現の変遷も、自然と見て取ることができましたね。また、タイポグラフィを思想の面だけで追っていくと、通常はどうしても、理念的にタイポグラフィの表現を確立した20世紀前半のスイスの作品に終始してしまいがちなんです。けれど同時期にも他国ではまた違った表現が繰り広げられていましたし、ポスターはその後もどんどんつくり続けられています。私自身、それ以降のタイポグラフィはどうなったんだろうと気になっていたんですよ。そこで、この展覧会では、DTPが出てきた後のデザインにも注目すると同時に、できるかぎり世界各国の作品をまんべんなく取り上げるよう心がけました。その点、竹尾ポスターコレクションは世界50カ国以上の作品を網羅していますし、20世紀後半につくられた作品も多数所有しているので、非常に選択肢に恵まれていましたね。今回のテーマはタイポグラフィでしたが、それ以外にも色々な切り口で語ることができる、充実したコレクションだと思います。それに現代のポスターに比べると、20世紀に制作されたものは、同じシルクスクリーンでもインキののり方がまるで違ったりするんですよ。たっぷりとのったインキの厚みは、展覧会図録のような印刷物ではなかなか味わえないものなので、そちらもぜひ肉眼でお楽しみください。